夏の終わりに聴きたいソフトロック極私的10選

ソフト・ロックの名曲

お盆を過ぎると何となく寂しさを感じるのは私だけだろうか。

学生時代の4年間、鵠沼海岸のビーチまで歩いて3分という場所でバイトをしていて、仕事の合間にはよく仲間と海で遊んだものだ。

夏には下手なサーフィン、友人との馬鹿騒ぎ、女の子との出会い、切ない思い出など出来の悪い青春映画のような日々を過ごしていた。海水浴客でごった返していたビーチもクラゲが増えるお盆過ぎには人影もまばらになり嫌でも夏の終りを意識する。過ぎゆく夏の寂寥感。

1年中夏休みみたいなこの歳になっても夏の終りには何とも言えない寂しい感情が沸き起こる。

そんな訳でビーチで過ぎゆく夏を惜しみつつビールを飲みながら聴きたい曲を極めて私的な基準で10曲選んでみた。

Malibu U. / Harpers Bizarre

米ABCで1967年の夏に7エピソードだけ放送されたバラエティショーのテーマ曲。

ビーチで楽しむことが専攻という何とも能天気な架空の大学Malibu U.を舞台に毎回豪華ゲストが出演していた。夏の浮かれた気分にぴったりな曲。

なお、この曲はHarpers Bizarreのアルバムには収録されておらずシングル”Anything Goes”のフリップサイドに収録されている。

Thru Spray Coloured Glasses / Dino, Desi & Billy

世界中を旅するサーフィン映画”Follow Me”(1969)の挿入歌。Dean Marinの息子Dean Paul Martin、ルーシー・ショーで有名なTVスターDesi ArnazとLucille Ballの息子 Desi Arnaz Jr. 、そして2人の友人でフィリピンのカジノオーナーの息子にしてビバリーヒルズの住人Billy Hinscheの3人からなる究極のお坊ちゃまバンド、Dino, Desi & Billy。

批評家のウケは良くなかった彼らだが、佳作を多く残している。そしてこの曲は、私の回りでも大好きな人が多い。イントロだけでやられてしまう最高の一曲。

Goodbye, Columbus / The Association

フィリップ・ロス の原作を映画化した” Goodbye, Columbus”(1969)のタイトルチューン。
Ali MacGrawの出世作で内容的にはひと夏の切ない青春映画(破局は秋だが)で学生時代に観て殆ど忘れていた。唯一役に立ったのはジャケットを小さいスーツケースに入れる方法。しかしJim Yester作の青春の輝きを歌い上げたこの曲は大好きで私の長年のお気に入りだ。
The Associationは、インドに自分探しの旅に出ていたバンド創始者Jules Gary Alexanderが復帰し7人体制になったが人気はこの頃から低迷するようになった。”Goodbye, Columbus”は最後に咲かせた一花だった。

Groovy Summertime  / Love Generation

1967、サマー・オブ・ラブに呼応して結成されたバンドThe Love Generationのヒット曲。
Love & Peaceで理屈抜きに夏の歌。The Love Generationについては書きたいことはたくさんあるがまた別の記事で。

See You In September / The Happenings

日本より夏休みが長いアメリカでは彼女が帰郷したり、家族でバケーションのため町を離れる、そんな一時的な別れの季節の寂しさと再会への思いを歌ったヒット曲。The Happeningsもメンバー全員Jersey Boysで、フォーシーズンズスタイルのコーラスワークが素晴らしい。

A Summer Song / Chad & Jeremy

Chad & Jeremy といえばソフトロック的にはサイケ化したアルバム”Of Cabbages & Kings”、”The Ark”が素晴らしいが、お盆過ぎに聴くのはやはりフォーク期のA Summer Songだ。実際には別れてしまった恋人との夏の日々を想う曲なのだが、この切ない感じが夏の終りの寂寥感にぴったり合う。

Summer Sound / Best Of Friends(Joe & Bing) 

謎の米国人デュオJoe KnowltonとBing Binghamがブラジルの鬼才Eumir Deodatoと組んで作ったアルバムDaybreakに収録されたメロウチューン。”Daybreak”は米国では少量プレスされたものの発売されずブラジルとイタリアでBest Of Friends名義でリリースされたらしい。一時は随分と高値で取引されたが現在はリイシュー盤が手頃な価格で出回っている。

忘れていた朝 / 赤い鳥

この山上路夫、村井邦彦による名曲は別に夏の曲ではないが、ヤマハリゾート・合歓の郷イメージソングとして大量にCMで流されていたため個人的に夏の歌として刷り込まれたもの。歌詞とは全く関係ないが夏の早朝の日差しは気持ちがいいものである。

Rene De Marie / Triste Janero

唯一のアルバム「Meet Triste Janero」を残したテキサスのセルメンフォロワーTriste Janero。グループ名は「悲しみの1月」という意味で、ブラジルの1月は夏ということでこのアルバムから1曲。

曲自体は夏とはまったく関係ないがジャジーなボッサで女性ボーカルがとても良い。少し暑さが緩んだ夕暮れ時に冷えたビールを飲みながら聴きたい。

Summer Symphony / Jack Gold Sound

Neil Sedakaの1969年のアルバム曲のJack Goldによるカバー。問答無用の夏の歌。波の音とベースのイントロから始まり男性コーラスに流麗なオーケストラが重なる名曲。

内容的には夜の浜辺でのロマンチックな一時と別れの歌で、しつこいようだが夏の終りの寂寥感に重なる名曲だ。

番外編 Catching A Wave / Steve & Teresa

ソフトロックに含めるには異論があるかもしれないので番外編としてこの曲を紹介したい。

ボサノバテイストのハワイアンAOR。ハワイの国民的歌手Teresa Brightが初期にSteve Maiiと組んで活動した幻のユニットSteve & Teresaの1983年の作品。長くレア盤だったがハワイのレーベルAloha Got Soulよりリイシューされ、タイトル曲が7インチ化された。

この曲、自分にとっては長年タイトルが分からず探し求めていた曲だった。30年近く前に南カリフォルニアの海沿いの道(PCH)を運転中、地元のFMからこの曲が流れてきて一発でノックアウトされてしまったがタイトルが分からない。しばらくしてもう一度このこの曲を聴くことができたがまたもやタイトルが分からない。当時、職場がLAの郊外にあるMTVが入居するビルにあったため、喫煙所で仲良くなったMTVの選曲担当者に鼻歌で曲のタイトルを尋ねてみたが、何回歌っても「それはDonny Hathaway の“Where is the Love”だ」と言われ結局不明のまま。

それが2年前に小西康陽さんからきっと気に入るはずとメールでお知らせ頂いたのがこの”Catching A Wave”だった。曲を聴いたときの驚きと感激はとても言葉で言い表せない。

国内では手に入らなかったのでAloha Got Soulに直接コンタクトをとったところ、アルバムもリイシューするところとの情報。小西さんもご所望というとであわせて予約。これが2020年7月のこと。しかし待てど暮せどレコードが到着しない。コロナ禍による郵便事情の悪化以前に、まず出荷されないので問い合わせをするが、只今プレス中とか蕎麦屋の出前みたいなことを言う。

結局到着したのは9月の終わりでもう夏は終わっていた。

年末にはJET SET アーティスト・DJが選ぶ2020年ベストディスクとして小西康陽さんが選んだ11枚に挙げられて、私とのエピソードをわざわざご披露頂いた思い出の1枚でもある。

人によって夏への思いは様々。皆さんもご自身の夏のプレイリストを組んでみては如何だろうか?

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